1. 複雑化するルール
昨日、フィギュアスケートの、殊にジャンプにおける「複雑化するルール」について記したばかりであった。その際に、
「最も危惧されるのは、詳細過ぎる決まりが選手達の故障の引き金となること。」とも述べた。
その昨日9日、羽生結弦選手が 公式練習中、四回転ルッツの着地の際に転倒。「右足関節外側靱帯(じんたい)損傷」の怪我を負い、加療のためにNHK杯を欠場することとなった。
今大会の欠場によって5連覇のかかるGPファイナル出場を逃すだけでなく、連覇がかかる平昌五輪の調整にも影響が及ぶ可能性が出てきた。
昨日の記述のタイミングと重なるようにして起こったのは、言うまでもなく偶然のことである。しかし、詳細な決まりにそって跳ぶ高難度のジャンプは、このように常に危険をはらんでいる。
羽生結弦選手の早期の快復を心から祈るばかりである。
2. 羽生結弦 戦績と実績
生年月日1994年12月7日 / 日本
2014年ソチオリンピック男子シングル優勝。2014年世界選手権・2017年世界選手権優勝。グランプリファイナル4連覇(2013年-2016年)。全日本選手権4連覇(2012年-2015年)。
男子シングル競技における、ショートプログラム(112.72点)、
フリースケーティング(223.20点)、
トータルスコア(330.43点)の現世界歴代最高得点記録保持者。
世界ランキング最高位1位。世界ランキングは2013年10月より1位を保持している。
3. 羽生結弦 実力
ジャンプ、スピン、ステップの全方位に秀でたオールラウンダーである。
ジャンプは踏み切りから着氷後の流れまで美しく跳び幅があり、GOE(出来栄え点)加点を得るための8つの評価要素を全て満たしている質の高さが特徴。このため完璧に跳ぶとGOE満点となる3点、または満点に近い高い加点を獲得する。
試合では4種類の4回転ジャンプ(トウループ、サルコウ、ループ、ルッツ)を跳ぶが、最大の武器は確実に加点の付くトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)である。
質の高さに加え、踏み切り直前に「カウンター」と呼ばれる難しいターンを行ったり、両足のつま先を外側に向けたスプレッドイーグルから踏み切り、着氷後に即イーグルに戻るなど、ジャンプへの入り方や出方の難度の高さなどからも常に2~3点のGOEがつく。
羽生の特徴はトリプルアクセルだけで確実に11点以上を稼ぐ点にある。
特に基礎点が1.1倍となる演技後半に組み込んだトリプルアクセルからの連続ジャンプは、めったにミスをしないことからも4回転以上の強力な得点源となっている。
このように、基礎点の高い高難度のジャンプ構成を成功させたうえで、かつ高いGOE加点を獲得できるのが羽生の強さである。
例として世界記録を塗り替えた2015年グランプリファイナルでは20.18点の加点(ちなみに4回転トウループの基礎点は10.3点である。つまり加点だけで4回転ジャンプ2本分の基礎点に匹敵する)を獲得している。
4. その他の主な選手
「Javier Fernández ハビエル・フェルナンデス」
生年月日1991年4月15日 / 出身地スペイン
羽生と同じブライアン・オーサーに師事し、安定感のあるベテラン選手。4回転のトーループとサルコウなどキレのあるジャンプを跳ぶ。2015年中国杯1位、ロシア杯1位、GPファイナル2位。
「ネイサン・チェン」
生年月日1999年5月5日 / 出身地アメリカ
幼少期に培った体操の能力を、空中での身体バランスの保ち方などに生かしている。5種類の4回転を武器とする
「ボーヤン・ジン 金博洋きんはくよう」
生年月日1997年10月3日 / 中国
中国4000年に1人の逸材とも呼ばれる天才的なジャンパーで、3種類の4回転ジャンプ(トウループ、サルコウ、ルッツ)を跳ぶことができる。
難度が高く基礎点が13.60という超高得点の4回転ルッツジャンプを特に得意としており、エッジエラー判定を受けることも殆どないため、強力な得点源となっている。
「宇野昌磨」
生年月日1997年12月17日 / 日本
5種類の4回転ジャンプ(フリップ、ループ、サルコウ、トウループ、ルッツ)と6種類の3回転ジャンプを跳ぶことができる。
4回転フリップは、2016年コーセー・チームチャレンジカップ(アメリカ・スポーケン)のSPにおいて、ISU公認大会史上初めて成功させ、翌日のFSでも成功させている。2016-17シーズンには、SPとFSの両方の構成に組み込んでいる。
5. 怪我の功名
こう見てくると、多くの方々が指摘されているように、羽生結弦は新しいジャンプを組み込まなくても勝てる。
ジャンプはただ跳ぶだけではない。その前後に用いられるステップなどの難度も加味され、一連の流れとして得点となる。ジャンプへの入り方・ジャンプ自体の技術と美しさ・跳び終わってから続くステップの難度など、全てのジャンプが、入りから次の流れへと繋がる連続性で得点されるのである。
しかし羽生の美学は、それに甘んずることを許さない。
羽生くん、怪我は悲劇だが、是非これを心の切り替えとして欲しい。
ジャンプへの捉え方は多種 存在するということをー。
何種類のジャンプを跳べるかを武器にするのも良し、
ジャンプ前後の一連のテクニックを含めて、それを武器とするのも良いのだ。
双方を手にすることを君は狙う。しかし今改めて君の持ち味、君の天才たる所以を問おう。
6. 天才 羽生結弦
今回の転倒時、羽生は発熱しながら滑っていたと言う。
多くの記録を保持しながら新しいジャンプも身に付けるというスケジュールをこなす羽生のことである。NHK杯を前にしながら、羽生の疲労は極限に達していたのではないのだろうか?
今君は日本の粋を結集した医療の中に置かれている。
足首を負傷しながらも、上半身でやるべきトレーニングは多くある。イメージトレーニングだって欠かせない。
何よりも、適度な休養は、今の君にとって武器にもなるのではあるまいか?
万全な体調の元で、君の天才的なスケーティングを堪能する日を、楽しみにしている。
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