1. 天陽くん逝く
NHK連続テレビ小説「なつぞら」(月~土曜前8・00)の第134話が9月3日に放送され、俳優の吉沢亮(25)が好演した画家・山田天陽が36年の短い生涯に幕を閉じた。
ヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)が恋心を抱き、絵心を教えられるなど、なつの人生に多大な影響を与えた人気キャラクターの最期に、インターネット上は号泣とショックの嵐。瞬く間に“天陽ロス”が広がった。
天陽くんのモデルは、同じ十勝で農業を営みながら夭逝した画家 神田日勝であるので、その死は予測できてはいた。
けれど、" 国宝級イケメン"の異名を持つ俳優 吉沢亮が、その土着性と何よりも芸術家として持つ精神の透明性を熱演したので、視聴者に広がる喪失感は大きなものとなった。
2. 天陽となつ
逝去した後に周囲の人々が驚くほど、天陽くんの芸術家としての評価は高く広まっていた。
菊介(音尾琢真)が「そんなこと、本人は一つも見せなかったもんな」と悼むくらいにー。
4月からの視聴者としては、← (//_//) 詰まらぬ視聴者で申し訳ありません〜
この天陽くんが極めた芸術性の裏には、幼なじみのなつへの想いとの孤独な葛藤があった、ことを改めて感じずにはいられない。
小学生の頃天陽は、1人机に向かい没頭して、購入後すぐに死んでしまった馬の絵を描いている。
覗き込むなつはハッと気付き、天陽からノートを借りパラパラとめくってみせる。たちまち死から蘇ったかのように走り出す1頭の馬。
「凄ーい!」と感動するなつと、
自らの絵が生み出した思わぬ効果にただただ驚くばかりの天陽少年。
幼少期から2人の持つ芸術性の違いは芽生えていた、と思わせる場面である。
生家の稼業の苦楽に根ざして生み出される天陽の才能、と
漫画映画 ( テレビ ) として絵を動かして初めて生み出されるなつの才能、である。
3. なつへの想い
天陽くんはなつの憧れの人であり初恋の人でもあった。と同時に、天陽くんにとってもなつは初恋の女の子であった。
天陽くんのなつに対する想いと葛藤が込められたセリフや行動を追って行こう。
◆ 第14話 … 放課後、天陽の家でお互いをスケッチし合う2人
◆ 第34話 … 2人は帯広の映画館に『ファンタジア』を観に行くことになる。心躍らせるなつの横で、天陽は東京行き( = アニメーターになること)を後押しする。
なつ「行きたいなんて言ってない」
天陽「だったら、行くなよ」
◆ 第35話 … 天陽と照男(清原翔)とのなつを巡る?"あゝ勘違い?"スキー対決← 全力対決を制し、天陽くん勝利!
◆ 第41話 … なつの卒業式の日。雪の原に2人で寝っ転がってー。
天陽 ( 東京へ行くなつに )「おれは待たんよ。なっちゃんのこと、ここで帰るのは待たない。」
◆ 第43話 … 東京へ行くなつの送別会で
天陽「俺はなっちゃんが好きだ。それはこれからも変わらない」と突然の告白。
◆ 第60話 … アトリエでなつの手紙を読む天陽。
なつ ( の手紙 )『十勝に帰りたい、みんなに会いたい。だけど今は、振り返りません。私はここで生きていきます。』
天陽、赤い絵の具でなつの肖像画を塗りつぶし、涙する。
◆ 第78話 … 天陽の兄・陽平(犬飼貴丈)によって、なつは天陽が結婚すると聞かされる。
うおー!何ともむず痒い繊細初恋こりゃどうにもならんわでもそこを何とか大ストーリー (T-T) ← 傷心の皆さまを気遣え〜
4. 芸術家 天陽
天陽の芸術家としての立ち方は、なつの連れ合いである坂場一久の問いかけへの答えに言い尽くされている。
坂場は天陽に
「天陽さんにとって、絵とは何ですか?絵を描くことと、畑で作物を作ることは違いますか?」と問いかける。これに対し天陽はこう答える。
「畑仕事は食うためで、絵を描くことは、排せつかな。うん。我慢できなくなると、漏らしてしまうでしょう。そういうものですよ、絵は。」
芸術家はそれぞれ、己の芸術を表現する際の手法を持っているものである。
その顕著な例が芥川龍之介であると言っても良い。
芥川は小説を書く際に、古典に材を求めずには始まらなかった。これと定めた古典を換骨奪胎し再構築する手法でもって、芥川は針の入る隙も許さない、人間の本能をえぐり出す傑作を生み出した。
逆を返せば、材料となる古典が無ければ、芥川は小説を書くことができないのである。
天陽にとって、芸術は農業・酪農という基盤の上に生み出される排泄物であった。
これが天陽の手法だ。
農業・酪農という摂取物無くして、天陽の絵は生まれない。
5. 2人の女性
兄が入院中の天陽を見舞った時、天陽は病床で風景画を描いていた。
風景画も良いと褒める兄に天陽は、
「ここに小さい頃のなっちゃんでも歩かせれば面白いんだろうな。」と言う。
天陽くんはなっちゃんと一緒になりたかったのだ。芸術の方向性さえ一緒ならー。
以前にも同じ理由で、坂場一久さんになっちゃんを託したではないか。
もうっ!人生って切ない。私達どうして人間に生まれたの?@(//_//)@ ← 半分は猿🐵です
一方病院を抜け出し、アトリエで絵を仕上げる際に、天陽は妻の靖恵(大原櫻子) を離さない。
「靖枝と結婚してほんと良かったわ。」と抱き締め、遺作となる作品に向かう。
ここをもって、天陽くんにとって靖恵と芸術とは、既に渾然一体と言っていいくらいのものなのだと感じた。
靖恵が主になって畑仕事を酪農を担ってくれたからこそ、絵としての排泄ができたのだもの。
@(//_//)@ 靖恵さん、どうもありがとう(涙)
6. 補足
なっちゃんを描き、
赤い絵の具で塗り潰し、
坂場が目にとめた
ベニヤ板に描かれた天陽の姿
あれは、赤い絵の具の上に描いたものではないの?
↑
脚本家の大森 寿美男氏が、同様の裏ストーリーを頭の中に描きながらストーリー展開されていたことを、後日述べていらっしゃいました。おおー!
「俺にとっての広い世界は、ベニヤ板だ」
「なにもないキャンバスは広すぎて、そこに向かっていると、自分の無力ばかり感じる。けど、そこで生きている自分の価値は、ほかのどんな価値にも流されない」
「どこにいったって俺となっちゃんは、何もない、広いキャンバスの中でつながっていられる」
by 山田 天陽
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